キリスト教について

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洗礼・堅信 キリスト教について

ここでは、キリスト教に対してご興味をお持ちの方のために、その基礎的な知識や言葉についてご紹介します。また、さらに理解を深めていただくために、その理解への助けとなる書籍等をご紹介します。

キリスト教について

【1】起源

 イエスの活動されていた時期である今からおよそ2000年前、すでに多くの弟子たちや教えを求める人々が大勢イエスの周辺にいました。エルサレムで王やローマ皇帝への反逆者として捕らえられ、十字架につけられ殺されてしまった後にも、ローマ帝国の迫害を受けながら、弟子たちとともにその教えを信じて守り続けた人々は、やがてクリスチャンと呼ばれるようになります。キリスト教の始まりです。

 クリスチャンは迫害と殉教者の犠牲を出しながらも増え続け、334年にはコンスタンティヌス帝によってローマ帝国で公認され、ディオクレティアヌス帝時代の391年には、帝国の国教にまでなります。そしてここから、2000年の長い歴史を刻んでいきます。

【2】教派について

 キリスト教は、時代が下るについてキリストに関する理解や使徒継承の解釈の違い、国家や政治の影響を受けて、いくつかの教派に分裂しました。教会ではその都度、一致を求める公会議を開き教義の確定を行っていきますが、民族や文化の違いも手伝って異端や分裂はさけられなくなります。こうして第一ニケア公会議(325年)以降、395年のローマ帝国の東西分割、475年の西ローマ帝国滅亡や、イスラム世界の拡大などの影響も受け、ローマを中心とする現在のカトリック教会と、コンスタンティノポリス(ビザンチン)を中心とする現在の東方キリスト教会に分かれ、それぞれ独自の信仰の道と歴史を歩みます。そしてローマ教皇(法王)とコンスタンティノポリス総主教の対立がピークに達した1054年、相互破門という形で分裂は決定的なものになりました。これを大シスマと言います。

 東方キリスト教会は、民族や地域、それぞれの国の違いからギリシア正教会、ロシア正教会、ルーマニア正教会などの東方正教会と、アルメニア教会やコプト教会などの東方諸教会に分かれ、ローマ・カトリック教会のような統一組織を持たずに、それぞれが独自の歴史を歩みます。

 一方、ローマ・カトリック教会は、教皇のアビニョン捕囚とそれに続く教皇庁の分裂、再統合などもありましたが、中世期を通じてヨーロッパの政治や文化の中心であり続けました。しかしながら、ウィクリフやフス、サヴォナローラなど改革運動の萌芽、聖職者や教会の内部腐敗、ナショナリズムの勃興、そしてルネサンスなど、ローマ・カトリック教会を中心とするキリスト教のあり方を刷新するさまざまな要素が生まれ育ち、やがて大きなうねりに変わります。

 1517 年、マルティン・ルターに始まるとされる宗教改革は、このような大きな時代のうねりの中で、それぞれの国や地域によって異なった性格をもって始まり、進展していきました。ドイツにおけるルター、スイスのツヴィングリやカルヴィンなど、相互に影響を与え合いながらも、キリスト教伝統や礼拝、聖書などに対する信仰理解の違いから、それぞれ教派としての違いを鮮明にしていきます。

 イギリスにおいても、ルターやカルヴァンの影響に加え、ウィクリフ以来の母国語による聖書や礼拝への憧憬などが、当時カトリック教会の庇護者としてヨーロッパ覇権を握っていたスペインやローマ教皇庁に対する、国益を含めたナショナリズムの高揚とも相まって、独自の宗教改革を生みます。そしてルター派やカルヴァン派に代表されるプロテスタント諸派とは一線を画した英国国教会を形成します。この独自な立場は「ヴィア・メディア(中道)」と呼ばれ、まさにカトリックとプロテスタントを切り結ぶ存在になり、またそれ以降の数多くのプロテスタント諸教派を生み出す源泉ともなりました。

 メノナイトやバプテスト、メソジストなどが生まれ、アメリカ合衆国の独立やその後の発展、アジア、アフリカなどへのキリスト教の広がりは、さらに多様な教派を生み出していきました。

 また、カトリック教会内部でも、「対抗宗教改革」と呼ばれるようなさまざまな改革を行ったり、「解放の神学」に代表される第三世界における被抑圧者の立場に立った運動も起こります。

 現代では、こうした分裂の時代は過ぎ、諸教派が自己主張を強めるのではなく、イエス・キリストの福音の原点に立ち戻って相互に対話を重ね、和解し、共に働き、共に歩もうという運動が、少しずつですが進展してきています。これが、エキュメニカル(教会一致)運動です。

(2)キリスト教についての理解を深めていただくために

【1】聖書を学ぶために

 まず、聖書についてです。世界各国で非常にたくさんの聖書が翻訳、出版され、日本でも明治以降、先人の努力により日本語の聖書が発行されてきました。現在では、翻訳文の違いや、形や大きさの違いを含め、たくさんの種類の聖書が出版され、流通しています。

 その中で、日本のキリスト教社会のスタンダードとなっているのが、日本聖書協会から発行されている「新共同訳聖書」*1です。これはカトリックからプロテスタント諸教派が協力してつくられた「共同訳」を、現代日本語として多くの人に読み継がれるために、さらに改良したものです。

 日本聖書協会からは、このほかに「文語訳」「口語訳」など翻訳文の違う聖書が刊行されています。また、新共同訳聖書の本文に、美しい絵画などをあしらったものや、事典機能を合わせたもの、英語との対訳形式のものなどもあり、サイズでは大型の卓上版からポケットに入るミニサイズまで、多種多様な聖書が発行されています。

 聖書そのものを深く、繰り返し読むことは信仰を深めるため重要なことですが、聖書の生まれた背景や歴史・文化の違いなど、実際に読み進めていくとわからないことも多々出てきます。そんな疑問に答えるため「新共同訳 聖書辞典」(キリスト教新聞社)*2が発行されています。

 また、聖書に記載されている様々な記事や言葉が、どの章にあるかを索引できる「コンコルダンス」(新教出版社)*3もあります。

 日本聖書協会以外からも、さまざまな聖書が刊行されています。原典の校訂から原語解釈、聖書解釈や、信仰や人生観の違いも反映したものまで、非常に多様です。ここでは、二つの聖書をご紹介しておきます。一つは岩波書店から発行されている「新訳聖書翻訳委員会訳 新約聖書」*4です。聖書学者として著名な荒井献氏を中心とした委員会が、アカデミズムの立場から原文の緻密な校訂や検証、そして最新の研究成果を生かしてうまれた画期的な聖書翻訳です。

 二つめは、カトリックの司祭で釜ヶ崎反失業連絡会共同代表でもある本田哲郎神父の「小さくされた人々のための福音〜四福音書および使徒言行録〜」(新世社)*5です。神父は新共同訳聖書翻訳委員会の委員も務められた高名な聖書学者でもありますが、弱者の視点から新約聖書の全面的な改訂を試み、自ら出版されたものです。

【2】礼拝を学ぶために

 キリスト教徒になる、とはどのようなことなのでしょうか?改めて問われると、クリスチャンでさえドキッとする方もいると思います。「日本聖公会祈祷書」には入信の式の項に教会問答があり、これらを血肉にしていくことである、というのが模範解答になるのだと思いますが、この問答についても適切な解説は大変重要です。「教会に聞く」(聖公会出版)*6は、聖アンデレ教会の前牧師であった竹内謙太郎司祭による、その入門書です。祈祷書に書かれている意味や背景、考え方など、幅広い見地から解説がなされています。

 キリスト教そのものが海外からもたらされた日本にとって、その礼拝にかかわる言葉、用語、概念には感覚的に、しっくりとこなかったり、理解するのに難しいことが多々あります。こうしたことから、カトリックからプロテスタントまで各教派の礼拝研究者が結集して作られたのが「キリスト教礼拝・礼拝学事典」(日本キリスト教団出版局)*7です。

 「礼拝と奉仕」(聖公会出版)*8は、日本聖公会の桑山隆執事が、礼拝奉仕者の役割やその働き、具体的な作法や所作について、写真や絵を交えてやかりやすく解説したもので、アコライト・サーバーやオルターにとっての教科書であり、信徒や一般の方々にとっても礼拝奉仕の基礎知識を得るのに最適な一冊です。

 実際の礼拝の流れ、動きを写真で追い、その意味や背景について詳しく解説されているのが「私たちと礼拝」(聖公会出版)です。竹内謙太郎司祭夫妻が共同作業でまとめられたものです。

 原始教会から現代に至る礼拝の歴史を、教会建築や音楽の観点から詳細な論考を交えて記述されているのが「時代から時代へ」(聖公会出版)*9です。ローマ・カトリック教会カプチーン修道会のエドワード・フォーリー神父が1991年に出版したものを、竹内司祭が翻訳したものである。フォーリー神父の日本語版への序もついています。

【3】キリスト教を学ぶために

 「クリスチャンの信仰入門について最適な本は何か?」と問われると、誰でも何冊かの本は浮かんでくると思います。三浦綾子さんの「氷点」や遠藤周作の「沈黙」などの小説かもしれません。

 ここでは聖公会を代表する信仰入門書として「キリスト教の精髄」(新教出版社)*10を紹介します。「聖書に次いで、世界中で最も多くの人々に読まれている本」と称されたこともあるこの本は、「ナルニア国物語」で有名なC・S・ルイスが、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツの空爆で暗い世相のイギリス国民のためにBBCラジオで放送した話をまとめたものです。クリスチャンとは何か、という根源的な問いをはじめ、ルイスの人間性からにじみ出た珠玉の話が続きます。

 基本的な事柄を調べる、ということを中心に考えると、キリスト教について全般的な事物を網羅した事典として「岩波キリスト教辞典」(岩波書店)*11は、最適な1冊の一つであるように思います。

 キリスト教会独自の習わしであり、信仰生活の時間的な流れの基準となる教会暦も、日本人には難しい問題の一つです。「教会暦」(新教出版社)*12は、カトリックからプロテスタント諸教会まで、それらの違いも網羅して理解できる好書です。

 聖公会を生み出したイギリスの文化や宗教改革以降の歴史については、ノーマン・サイクスの著した「イギリス文化と宗教伝統」(開文社出版)*13に詳しく記されています。

 少し変わった角度から1冊の本を紹介します。先に、益川敏英氏と小林誠氏がノーベル物理学賞を受賞しましたが、ジョン・ポーキングホーンは彼らと同じく非常に著名な量子物理学者で、その創始者の一人であるP・ディラックから直接指導を受けたケンブリッジ大学の教授でした。科学と神学は、相対立する概念として信仰の大きな障壁と見られる向きもありますが、聖公会の司祭でもある著者が、神と科学との関係について「科学者は神を信じるか」(講談社ブルーバックス)*14で正面から論じています。

 最後になりましたが、聖アンデレ教会では信徒の信仰理解を深めるたに、牧師の説教や記したものを独自に本としてまとめ、ご希望の方々にお配りしています。牧師の大畑喜道司祭の説教をまとめた「神の愛に包まれて」(I、II)*15と、前任の竹内謙太郎司祭の説教をまとめた「主日日課から」(1〜6)*16がありますので、ご希望の方は教会までお問い合わせ下さい。

(3)資料集

PDF ファイルにてご覧いただけます。

主の祈り(日本語、英語)

ニケア信経と使徒信経(日本語、英語)

*1『聖書・和英対照/新共同訳聖書』
*2『聖書辞典』
*3『コンコルダンス』
*4『新約聖書』
*5『小さくされた人々のための福音』
*6『教会に聞く』
*7『キリスト教 礼拝・礼拝学事典』
*8『礼拝と奉仕』
*9『時代から時代へ』
*10『キリスト教の精髄』
*11『岩波キリスト教辞典』
*12『教会暦』
*13『イングランド文化と宗教伝統』
*14『科学者は神を信じられるか』
*15『神様の愛に包まれて』
*16『主日日課から』